東京高等裁判所 平成11年(う)208号 判決
被告人 周松強
〔抄 録〕
そこで検討すると、原判決の認定した原判示第四の事実は、被告人が、寺嶋正義、吉澤清則、星らと共謀の上、星名義の一般旅券を不正に入手しようと企て、星作成名義の一般旅券発給申請書を作成して、これを東京都生活文化局国際部旅券課池袋分室に提出したというものであるが、星名義の申請書を作成することについて、星本人がこれを承諾をしていたことは、所論が指摘するとおりである。
しかしながら、一般旅券発給申請書は、その性質上、申請に基づき公的機関による手続が開始され、申請者本人に一般旅券という重要な公文書を発行するかどうかを審査するという公の手続内において用いられる文書であって、本来申請者本人が他人の名義を用いて右申請書を作成し、提出することなど法令上許されていないものなのであり、したがって、また、一般旅券の発行対象について人違いがないようにその対象者は申請書の作成名義人その人であることが要求され、作成名義人である署名者本人が自署することを必要とする文書とされているのである。そうすると、本件のように、他人である星が申請者である被告人に星名義の申請書を作成することを承諾していたとしても、被告人の前記所為につき有印私文書偽造、同行使の罪が成立することは明らかである。
(米澤敏雄 岩瀬徹 沼里豊滋)